第8回 大切なのは、技術力+お客様に寄り添う心
私は、たとえ小さくとも最高レベルの技術力を持つ中身の濃いカツラ専門店になるんだと……。
それを目標に、今まで地道に歩んできました。
毎日、毎日、そういう想いで『研究開発と技術講習』を行っています。その地道な活動が、現在の特許取得に繋がっていると自負しています。
例えば、カット技術にしましても、そのプロセスと技法を理論的に体系化して特許を申請中です。
このカット技術を習得すると、従来のように理美容免許を取得していないレベルの方でも、カツラの正しいカットができるようになります。
このように体系化した技術を、全国の同業・競合となるカツラ専門店にも広めることができれば、カツラをご愛用いただいている多くのお客様に喜んでいただけるものと確信しています。
前回でも触れました通り、スタジオ技術者は技術力だけではなく、お客様の意を汲む能力も大切な要素です。
例えば、お客様との初顔合わせとなるカウンセリングでは『お客様が心から望んでおられることは何か?』ということにフォーカスしてお客様のお話に耳を傾けます。
「こうすれば良い、ああすれば良い」のような売り手側の都合を優先せずに、あくまでもお客様が「本心から望んでおられる事」をお話いただけるようにリラックスした雰囲気を作りながらカウンセリングに臨まなければなりません。
例えば、ある60歳手前のお客様は、
「カツラをするのは若返りたいからではなく、むしろ年齢に見合ったヘアスタイル」を望んでおられました。
ところが、これまでご利用されていたある大手カツラ専門店は、40歳前後でもおかしくないような毛髪量でした。それで年齢を考慮して白髪量を増やしたのですが、それでも最近では、なんとなく違和感を感じていました。
そこで私は、当社スタジオにある様々なタイプの試着カツラをご用意し、どの程度の毛髪量と白髪量がピッタリ合うのかを、お客様の納得のいくまで試着していただきました。
人間は誰でも歳を重ねるごとに髪の量も減り、髪自体が細くなります。もちろん、同時に白髪も増えます。
これが人間の自然な姿です。
手前味噌になりますが、私どもハリウッドマジックでは、年齢に合わせた毛髪量・白髪量のカツラをメイキングしています。あくまでも自然なヘアスタイルで生き生きした楽しいライフスタイルに貢献できることを願っています。
何れにしましても『お客様が真に望んでいること』を第一に考え、どのようにすれば叶えられるか、どのような技術を駆使して上手く表現するかを考えなければなりません。
「今まで何十年とカツラを使ってきたけど、このカツラが一番良い」といったお手紙やご意見をいただいとき、心の底からホッとします。その日は、安心して熟睡できます。
そのためにも私どもカツラ技術者は、お客様のご要望・願いに応えられる技術を磨き続けなければなりません。
もし、技術力がストップしたらお客様の心は離れて行くでしょう。
例えば、クルマの場合ですと、5~7年ごとに買い替えるケースが多いようですが、もし買い替えるクルマが既使用車とまったく同じ性能だったらどうでしょう。
わざわざ買い替えるでしょうか?
きっと、別のメーカーに乗り換えるハズです。
これはカツラでも同じです。
次に買い替えるカツラには、これまで使っていたカツラよりもレベルアップしていることを願っているハズです。
『技術の停滞は、後退に等しい』
私どもカツラ技術者は、弛まぬ努力を惜しまず研鑽しなければなりません。