第6回 カツラの技術と品質(中編)
私は、カツラに限らず、どのような商品でも研究し続けることが大事だと思っています。
研究開発は、立ち止まったら、そこで終わり。
ある時点で、画期的な素晴らしいカツラが出来たとします。でも、一年も経てば、それはもう過去のもの。
時の移り変わりとともにお客様がお求めになる商品は、常に移り変わっていきます。
だから、休むことなく、常に上を目指して研究開発を続けなければなりません。
その気持ち、心意気が大事だと思っています。
手前味噌ですが、それが私どもハリウッドマジックの礎になっていると思っています。
ここで一つ、カツラをご利用になられているお客様の方々に、是非、知ってほしいことがあります。
それは『カツラの品質を決定づける要素』です。
1980年代以降、カツラの製造は、ほぼ100%海外で生産されています。特に人毛を使ったカツラの場合、国内では手に入りにくいため海外調達が必要です。
また、カツラ製造工程の中心である植毛は、手作業になりますので、コストのことを考えると人件費の安い東南アジア地域での海外生産にならざるを得ないのです。
このような事情により現在、大手・中小を問わず、ほぼすべてのカツラメーカー・専門店が海外生産にシフトしていきました。
つまり、ベースとなるカツラの素材や植毛品質そのものは、どのメーカーでも品質的な違いに大きな差異はないということです。
では、どこで品質の差異が生まれるのか?
それが、スタジオの技術スタッフの力量です。
何故、そう言えるのか?
スタジオ技術者の具体的な役割をご説明しましょう。
オーダーメイドカツラの製造するには、まずスタジオで
お客様の『頭形の採寸、髪質・頭皮の健康状態』を丹念に計測します。
この計測は、技術者の経験がものをいいます。
ここを間違えてしまうと、後のカツラの製造段階でお客様の意に沿わないものが出来てしまいます。
ですので、慎重の上にも慎重を重ねて計測しなければなりません。もちろん、カウンセリングでお客様の意をどこまで丁寧に汲み取ることができるか。そういうところにも細心の注意が必要です。
この段階では、やはり技術者の経験がものをいいます。
そして、何より「お客様の気持ちに寄り添い、お客様の意を汲み取る」という真摯な姿勢が欠かせません。
スタジオ技術者は、採寸したデータを基に設計仕様書を作成し、海外の製造現場へ送信します。ですので、作成したデータが間違っていたり、設計仕様書に少しでも不備があると良質なカツラは出来ません。
とは言え、
このようにして海外の製造現場から出来上がったカツラは、まだ半製品の状態です。完成品ではありません。
海外の製造現場から送られてきた半製品カツラは、スタジオで技術スタッフの手で『調整・仕上げ』という工程に進みます。この『調整・仕上げ』が本当の意味で、品質の差異を生み出す工程になります。
調整・仕上げでは、製造されたカツラをお客様に試着いただいて100%完全にフィットするようにカツラの髪を調髪します。そして、装着感を確かめならがベースのサイズや形状を調整したり、時には手を加えて矯正したりと細部の微細な所まで、神経を集中させながら作業を進めます。
このようにスタジオの技術スタッフの力量が、カツラの品質を決定づける最も大きな要素です。